ジャガイモ畑
緑の隙間から光がきらきらこぼれてきます。光に透き通る葉。
薄紫の花を出たり入ったりするハチ。
忙しく動き回るありやてんとう虫や赤い虫を目で追いかけるのがおもしろくてたまりません。
この世界は、ヴィタリの秘密です。
ズブコ家の前には、お父さんが作ったジャガイモ畑が整然と広がっています。
まっすぐに作られた畝は、ヴィタリのために作られた道のように思えてなりません。
入ったらだめだと言われているのに、腹ばいになって畝を進んでいきます。
小さなお尻が、時々葉の間からチラチラ見えます。
程よい位置まできたら、横向きに寝転びました。
目の前に広がる小さな世界。
1番の友達は、赤い虫。背中には、人間の顔のような模様があります。
ヴィタリは目をキラキラさせながら、その顔をずーっと眺めています。
お面みたいな模様の赤い虫
時間が静かに過ぎていき、空がだんだん茜色に染まっていきます。
ザッザッザッ
道の方から足音が聞こえてきました。
お父さんが仕事から帰ってきたようです。
ヴィタリは、目をギョロリとさせ、出来るだけ体を小さくします。
お母さんは夕飯の支度や、幼い子どもたちのお世話に大忙し。
あら、、また今日もヴィタリがいません。
お父さんは再び外に出て、疲れた足で家の前の階段を降ります。
「パブルーシャ〜!おーい!パヴェル〜」
しばらくしてお母さんも手を拭きながら出てきました。
「パヴェル、どこにいるのー?帰っておいで〜」
ヴィタリ、いえ、パヴェルは、ドキドキしながら潜んでいます。
息を殺してジャガイモになりきっています。
お父さんとお母さんが何度も呼ぶ声が響いています。
それでもパヴェルは出ていきません。
お父さんの声のトーンがかわります。
「パブルーシャ!ファラオ!でてこーい!」
そろそろ 潮時。
お父さんとお母さんがいなくなったのを葉っぱの間から確認して、
よいしょ、よいしょ、
ジャガイモの間を這って進んでいきます。
そして、わざと回り道をして玄関からはいります。
ジャガイモ畑は、ヴィタリの秘密なのです。
太陽の秘密
なかなか家に入らないヴィタリに、お父さんはよくこう言いました。
「もう遅いんだから、ご飯食べて寝る支度しないとな。
ほら、お日さまもベッド入るんだよ」
振り向くと、太陽は山の向こうへ。
玄関に立って、ヴィタリは夕日を見守ります。
太陽は、山の向こうにだんだんと降りていき、、、すとん!
「あーあーいっちゃったぁー」
ヴィタリは、残念そうに手をブラブラさせて、家に入ります。
太陽も、今ごろ足を洗ってるんだろうなと思いながら、自分も汚れた足を洗います。
夜。虫の音が響きます。ベッドにはいったヴィタリの目の前にはいつもの美しい情景が。
“おひさまのベッド、、、。白くてキラキラしたおふとん。
温かくて、大きくて、ふわふわで。おひさまの家、いつかみてみたいなぁ”
そしてある日、6歳のヴィタリは、決意します。
小さなヴィタリが目指すのは、「あの山」。
いつも玄関からながめている、太陽が帰っていく不思議な山。
ヴィタリは、太陽の秘密を確かめるため、たった一人で山へ向かいます。
見上げると、太陽は雲の上。
太陽がベッドに入るまでには、まだ時間がある!
小さな男の子は、太陽の光の下を、急ぎ足で進んでいきます。
そしてとうとう、家からいつも眺めていた山に、たどりつきました!
この山の裏側に、光る大きなベッドがある、と思うだけでワクワクします。
目の前にたちはだかる急斜面を、ヴィタリは勢いよく登り始めます。
鼻と口を全開にし、ガシッガシッと山につかみかかります。
ジャガイモ畑のみんなが大きな茎をよじ登ってるように、ヴィタリも頑張って登ります。
小さな草や大きな草、枝や木に支えられ、輝く太陽のベッドに向かってはいあがる。
聞こえるのは、枝を踏む音、手が草を掴む音、そして時々足が滑る音。
と、その時。
ヴィタリの動きが急に止まり、ゆっくりと首を回し、後ろを振り返りました。
こわばる顔!
おばあちゃんの家が、、、あんなに小さくみえる、、!
村がはるか彼方に、、、!
急に背筋が寒くなりました。家から離れた山の中、たった1人。
向きを変えて降りようとしましたが、なにせ急斜面。手を離せば、ずるずると滑り落ちてしまいます。
すると、ヴィタリは脚を後ろへかわるがわる伸ばし、後進しはじめました!
斜面に身体が吸い付いているかのように。
ヴィタリは一気に山を下っていったのでした。
その晩も、ヴィタリはベッドの中で考えています。
“太陽は今日もベッドで寝てるのかな。あの山の向こうに帰ったんだな“
そしてひそかに誓います。絶対に、いつか太陽のベッドを見に行く!と。
チャンスが来た!
太陽は、来る日も来る日も、あの山の向こうへ沈みます。
太陽が家へ帰るのを確認して、ヴィタリも家に入ります。
しばらくたったある日のこと。
建築材料を採りに行くお父さんとおじさんに、ヴィタリもついていくことになりました。
その日は家に誰もいなくなるからです。
向かう先は、、、なんと、あの太陽の山!
ついにチャンスが訪れたのです!
3つの影が、太陽に照らされて山に向かって歩いていきます。
ヴィタリの胸はドキドキ!
坂を下って丘を上がって、、、山際を通って、ついに到着!
お父さんとおじさんは、もくもくと石を集めはじめます。
白い石灰岩や、大きな石や、砂、赤土など、建築材料になるものがたくさん採れる、すごい場所なのです。
お父さんは、息子に仕事をいいつけます。
言われたとうり、ヴィタリは近くに綺麗な湧水を汲んできました。
透き通った水の中で太陽がキラキラと揺れています。
お父さんとおじさんは、水を飲んでしばし休憩。
汗ばんだ体を、そよ風がすーっと冷やしてくれます。
近くの川からは爽やかなせせらぎの音。美しい緑の風景。
お父さんは、ヴィタリに目をやります。さっきから、様子が少し変。
いぶかしげに周りを見回しては首をふったり、空を見上げたり、、、。
なにかを探しているのか、、、?
しばらくして、幼い息子はお父さんにたずねました。
「パパ、おひさまのおうち、どこにあるの?おひさまのベッドはどこ?」
お父さんは、遠い目をして言いました。
「それは、もっともーっと、向こうの山だよー」
ヴィタリが急いで目をやると、
いくつもの丘を越えた彼方に、山が霞んで見えました。
そしてしばらく後、ヴィタリは、小学校の授業で真相を知ります。
地球は丸いので、どこまで行っても
太陽の家にはたどりつけないということを、、、。
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モルドバ料理 ジャガイモのオニオンソテー
シンプルで、おいしいジャガイモ料理よ!ベーコンがなくても大丈夫。玉ねぎはじっくり火を通して甘みを出してね。
ジャガイモは焼かずに、玉ねぎを炒めた油をまぶすだけでもおいしいです。
① 皮付きのジャガイモを、ひたひたの水から茹でて、皮をむいで輪切りにする。または、最初に皮をむき、輪切りにして茹でても良い。箸がすっと通るくらいまで。
② フライパンを中火にかけ、油を入れて温める。(ベーコンを使う場合は、ここで小さめに切ったベーコンを入れ、茶色ぽくなるまで、炒める)
刻んだタマネギを加え、時々かき混ぜながら、玉ねぎが少し透き通るまで炒める。 (そして、にんにくを入れる場合はここで追加して、さらに1〜2分炒める)
③ 輪切りにしたジャガイモをフライパンいれて、10分ほど加熱する。 時々それらを混ぜる。あまり動かしすぎると、カリッとした焼き目がはげてしまうので、控えめに。(玉ねぎがこげそうだったら、熱いジャガイモに玉ねぎと油をまぶす感じでさっと炒めて終わっても良い)
④ こんがりと焼き目がついたら、お皿にうつし、塩、コショウ、パセリ(またはお好みのハーブ)を振りかけて味付けする。
なにかの付け合わせにしてもいいし、メインとして出してもgood。お肉を焼いたあと、残った油でジャガイモを焼いてもおいしいですよ。この料理も、パブルーシャは大好きだったねぇ。